[概要]
ハーバードビジネスレビュ―に載った組織学に関する論文を集約したもの。
理論的なものが中心になっているものや、組織学の良い成功事例への考察、どのように高めるか、どのように評価するかといった内容が幅広くまとめてある。
組織能力の経営論 (Harvard Business Review) 中古価格 |
[感想]
組織学について幅広く学べたのは良かった。
SECIモデルについても本人の手で詳しく書かれており、大変勉強になった。
個人的に面白かった話は、ダブルループの話とそれに関連して、防衛思考が働くという点である。
シングルループは現状とそれに対する反省から復習を行う思考法。
ダブルループは現状の前提はそもそも正しいのかを問う思考法である。
そして組織の中でダブルループを行うと、上司や経営層への反対意見になることや事が大きくなる場合がある。
それを避けるために、無駄だとわかっていても提言しない社員がいる。
このように自発的な行動が阻まれたり、組織内での成長への学びが生まれにくい土壌が生成されている場合がある。
もしくは経営者が組織全体の協調を考えようと言いながらも、部署間の経費削減などを必要以上にあおる場合がある。
このように発言の矛盾がある場合、もしくは自発的な行動を阻まれるようなジレンマがある場合組織の学習する文化は損なわれる。
防衛的思考がダブルループ思考へのステップを阻み、成長を阻害するのである。
またディープスマートの話も面白かった。
よくいえば直感的に判断できるベテラン勢である。
ベテランから新人への知識移転のノウハウは正解はないものの、それを科学的に分析しようとしていた点が関心を引いた。
エビデンスマネジメントの話も面白かった。
当然と言えば当然だが、事実に基づいた検証や行動というのは重要である。
しかし難しい。
情報を都合よくゆがめることは簡単だからである。
実際にこれが出来るようになるには莫大な情報や入念なロジックがいる。
果たして実行できる組織はどの程度あるのだろうか。
またこれに合わせて、組織の給与差の話も上がっていた。
このエビデンスが本当なら、感覚の問題ではなくやはり給料に差をつけすぎるのは良くないのかもしれない。
資本主義と社会主義と考え方はいろいろだが、こと組織運営に関しては差は縮めるべきなのかもしれない。