[概要]
海外の成功事例や学術成果をすぐに鵜呑みにする人も多いかもしれない。
しかし実際にそういったものを導入することの難しさやでデメリット、文化の違いなどによりいつも成功するわけではないという事を指摘した本。
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[感想]
個人的に面白かったのは、第一部の3章であった。
オープンイノベーションに関する否定や、プロジェクト型で行うことの欠点、ステージゲート法によって研究開発を選別していこうとする話である。
プロジェクト型やそれに似た組織運営は現在多くの企業でも行われていると思う。
過去に読んだハイアールでもその良さを挙げていた。
少なくとも弊社は、ここで書いてあったものと様相は違うかもしれないが、一応プロジェクト型になっている。
またステージゲート法によって研究開発を絞っていくやり方も現在主流となってきているのではと思う。
オープンイノベーションと相まって、基礎研究は大学で応用研究や商品化は企業でといった流れもおかしくないだろう。
意識高い感じのネット記事でもオープンイノベーションの良さを推し進めているようなものを見かけたことがある。
これらの方法も、一見うまくいけば大きく成果が挙げられるようで実際にはデメリットも多いという話や導入する際の障壁など目を覚ましてくれるような内容が面白かった。
結局シンプルで伝わりのいい方法論に目がくらむのは人間の性なのかもしれない。
そして思うようにいかないのが世の中であり、社会学の奥深さなのかもしれない。
現場が全知全能のような優れた人ばかりならばともかく、実際には能力にも差があり、新人もおり、人間関係もある。
そんな中で深く考えずに収まりの良い解決策を求める事は何も考えていないよりも悪いかもしれない。
全てを同時に満たす最適解は簡単には得られないのだ。
この本の中では、実は日本ではITのラディカルなイノベーションを起こした十世紀があるという事を挙げていた。
そして日本という特殊な環境だからこそ国際的なイノベーションになっていないとしていた。
似たような結論、つまり日本ならでは というオチになる。
結局「日本では」というオチになるのなら初めから海外の成功事例や理論を追うのは間違っているのかもしれない。
一方で限られた市場を広げるためには国際的なやり方、考え方を身に着ける必要がある。
どこまでの範囲で物事を考えられるか、抽象化できるか、 今後成果を上げるためには考え続けなければならないのであろう。