[概要]
SECIモデルや事業を行う場に着目して企業の事例を分析している。
事例のおかげで理論の意味が少し伝わりやすくなっているが、慣れないうちは理解が大変なように思う。
イノベーションの実践理論 (HAKUTO Management) 新品価格 |
[感想]
これはSECIモデルの話が、事例も含めた全体を通してのテーマになっていることに関係する。
単純に組織内でのSECIモデルではない。
例えばホンダの事例の中でアンケートについて書いてあったが、どの企業がアンケートを行ってみても、得られる解答は既に顧客の頭の中で常識になっているものでしかないのである。
アンケートを繰り返したところで、これまでの顧客の常識を再認識するだけであり意味はない。
ホンダが既存のライダーではなくこれまで注目しなかったバイカーに着目したように、これまで目を向けてなかった相手に価値のあるものを提供することが重要なのである。
つまりシェアですらないところに大きな機会が巡っている。
組織内の暗黙知も重要であるが顧客の中の暗黙知も同様に重要であると思った。
これは技術の製品化までに存在する、死の谷を克服するためにも必要であると思う。
技術と市場の間に不確実性があり、その谷を越えるためにも顧客の暗黙的なニーズを掘り当てる必要があるように思う。
また事業部制では部門間の壁に阻まれ、知識の交換を行いにくくなっている。
これを打破するための組織ネットワークや「場」の形成が欠かせない。
キヤノンは研究所を集約することでそれを行ったし、レクサスは互いの話を聞く姿勢を大切にすることで対処した。
うまく場を作れたのである。
知の創造性と生産性の両方を併せ持つ組織を作ることがすぐれた組織に必要なのであろう。
SECIモデルのSEは創造性に関係しており、CIは実現性を高めること、つまり生産性に関係している。
これを両利きの経営という場合がある。
これまでの内容をより良くしていく経営と、これまでのやり方をあえて捨てて新しい事業を創造する経営が必要である。
SECIモデルを実現させる組織文化を作ることが出来れば、成長のために想像も破壊も行うことが出来るのであろう。