[概要]
イノベーター理論を中心に、知財や研究開発など技術経営に携わる分野を広く分かりやすくまとめてある。
既存の研究などをまとめた部分は分かりやすい一方で、筆者自身の意見は論理性がないように感じる部分が多い。
基礎を学ぶにはちょうどいい。
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[感想]
一部分かりにくい図がある。
いかにもきれいにまとめてあるような図だが、説明がないのに抽象的過ぎて伝わらなかった。
また後半の著者の意見、例えば国別のマーケット構造のイメージや国別の技術の概要は全く論理性がなかった。
例えば、ヨーロッパは石と煉瓦の文化だから保守的、一方で日本は紙や木の文化だからそうでもないというのは全く意味が分からない。
文化の違いはそもそもの技術発展の違いから生じるものであり、それは気候の違いによるものである。
島国で他国からの外圧がないから保守的という説明ならまだわかるが、技術的な違いを詳しい説明もなく保守的というのは道理が合わない。
こういう本を書くのであれば、技術に対するこれらの表現はかなりひどい。
という感じで著者の意見の部分はかなり論理性がなかった。
イノベーター理論の中のそれぞれのパートで市場形成の山を書くというのは初めて見て参考になった。
また特定の機能のみを求めてくる取引先は、こちらが下請けの立場になりやすいという話は初めて聞いた。
まさしくその通りなのであろう。
私はIT系なのでどうしても相手の求める機能を形にするしかない。
どこまで行っても下請けや御用聞きなのかもしれない。
上手に出る必要もないが、この点は覚えておきたい。
最後になるが、この本では技術のロードマップを作ることで経営はうまくいくとしており、いかにそれを作るかを説いていたが大事なのはそこではないと思う。
大事なのは自社以外の状況に常に目を配りながら考え続けることである。
最適なロードマップを描けたところで、その通りに行くほど世の中甘くない。
大事なのは経営層や技術部長などの層が常にアンテナを張り巡らせ修正を重ねながら技術や製品の行く末を描くことである。
一度に全て描けるほど容易いものではないだろうし、それを外部のコンサルに頼むであれば技術部長の役職はいらない。