なぜ新規事業は成功しないのか―「仮説のマネジメント」の理論と実践
[概要]
新規事業を行うにあたって、どういった点に気を付けるべきかをまとめた本。
あくまでも、仮説の立証のために方法論や目標の設定方法をまとめた本であり、アイデア創出や取捨選択の方法については書かれていない。
この本の内容を理解したうえでもう一回り考える必要がある。
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[感想]
概要にまとめたように、書かれているのはどう動かしていくか、そのためにどういうことを考えていくかである。
この本に抜けていると感じる点はいくつかある。
一番に感じたのはイノベーションのジレンマにいかに対応するのかという点がないという事である。
この本では、大企業なら売り上げは少なくとも〇億円必要であり、それが叶うようなプロジェクトを行うべきであるという論調である。
しかし実際に今の事業継続に目がくらみ後発に市場を奪われたケースはいくつもある。
それについて論じない限りは、あくまでも今のところ市場によくあって利益が確保できそうなくらいにはなっている事業の話になってしまいかねない。
そこまで踏み込んだ意見が欲しかった。
またここで書いてある仮説は仮説ではなかった。意見を出している段階では仮説と呼ぶには不十分である。これしかないというくらいまで考え込んでこそ仮説である。
適当に数字を並べることが仮説ではなく、数字を並べるためにどういう頭の使い方をしてどう理屈を並べるのかが重要なのである。
そこを勘違いしているような気がした。
一方で競争領域の売り上げや利益率による分析は参考になった。
このようなものは見たことあるような気もするが、改めて勉強になったと思う。
株の分析をする際などにもこういった指標、考え方は役に立つと思う。
一方で新規事業について市場と技術の2軸で分析している図は理解できなかった。
特にキヤノンの新規事業について技術や市場を分けるときに、どうしてこの並びになるのかが不明確である。
技術の難しさや参入のしにくさで並べているのあればその説明が必要であると思う。
また産業固有の時間という話から、産業界と比べて政府の行動は遅いという話を思い出した。
規制産業の場合は政府と同じで対応が遅い場合が多いだろう。
遅い業界から早い業界への乗り換えが非常に難しいのであれば、現在規制緩和されている電力業界やガス業界の勢力図はどのように変化していくのだろうか。
組織特有の時間軸というのは弊害になる場合が多いのであろう。