技術経営卒の書庫

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イノベーションのジレンマ

[概要]

破壊的イノベーションが既存の市場を奪ってしまうことがある。

これは持続的イノベーションにより既存の市場で勝利していた大企業には大変な痛手である。

破壊的イノベーションは新規企業やベンチャー企業によってもたらされている。

 

イノベーションのジレンマ 増補改訂版 (Harvard Business School Press)

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[感想]

破壊的イノベーションの脅威や文献の情報量が非常に興味深かった。

破壊的イノベーションの影響力はすさまじいものである。

しかしこの本には破壊的イノベーションがいかにして起こるのかの具体性が欠けていたように思う。

小型化さえすれば破壊的である。のような文体であったが、果たしそうであるかが疑問である。

本当に、見るべき尺度は本当に大きさと容量だけだったのだろうか。

ディスクを使った製品の需要やライフスタイルの変化はどうなのだろうか。

そもそも新技術が既存技術に必ず追いつくのか?という点が確立していない以上破壊的イノベーションの存在を規定できないと思う。

本の例にあった電気自動車も、現在のところ、まだ成功とは言えない。

電気自動車もこの本に倣ってか、中国では安価な電気自動車が売られているらしい。

実際に売れ行きなどは知らないが、それは求められていた製品なのだろうか。

 

文章として、破壊的イノベーションの定義はしっかりされていたと思う。

しかし破壊的イノベーションの事前性や発生条件を「市場の変化」などという言葉でごまかす事なく表現してほしかった。

もしくは満たされつつある市場の片隅にある、見えない市場をどうやって見つけるのかを提示してほしかった。

それがない限りは、特別な言い方をしているだけでマーケティングの失敗と言い換えることが出来るからである。

事実小型化製品や小回りの利く製品が既存市場を脅かしたが、これを単に需要の変化といえばそれで終わりである。

ある機能がどこまで行けば需要は十分に満たしきれてしまうのか、どこまで行けば破壊的イノベーションに食われる可能性があるのか、といった所までを踏まえて表現することで、この論理は最終的な完成を迎えると思う。

 

一方で新規事業を行うための組織論については興味深かった。

企業のどういった立ち回りが成功してきたのかについて書いてあり、そこから学ぶべきことは多いと思う。

現在はオープンイノベーションの時代になりつつある。

こうなるといかに組織のプロセスや価値基準を持たせるかが重要になってくると思う。

他社の技術などをどれだけ柔軟に組み込むのか、その際にはどういった戦略をとるのかといった点で固定的な価値基準を持つことは難しい。

状況は常に違うからである。

変化していく中で企業が組織としてまとまるための価値基準と流動的な変化を常に受け入れられる価値基準を併せ持たなければ、どんな大企業も失墜してしまうと思う。

今後はオープンイノベーションの加速により、さらにバリューチェーンの構築がされやすくなるだろう。

その中で生き残る企業とはどういったものであるのだろうか。