イノベーションの誤解
[概要]
イノベーションがどういう風に広まっていくのかという点とユーザーイノベーションはどういった人たちの間から生まれやすいのかの2点について研究しまとめた本。
他にも日本の技術神話などにも切り込んでいる。
新品価格 |
[感想]
ポケベルをメール機能として使うところから着想を得て、当時の携帯電話にメール機能を実装した。
同様にSUVという車の利用方法も、元をたどればユーザーの使用例から着想を得たらしい。
このようにユーザーの利用行動から、需要側の動きから製品の価値を産み出すことをユーザーイノベーションという。
今の日本の製品にはこうした姿勢は少なく、既存機能の進化ばかりを追求している。
これによってガラパゴス化したというのがこの本の始まりである。
製品を市場に出し、求められている使い方に応じて製品を提供するのはドラッカーのイノベーションの1の機会である。
そういった目の前の機会をつかんだのはいいものの、その後は機能改善ばかりに目がいってイノベーションが生み出せないのはもったいない。
そしてそういった新製品が好きな人たちはユーザーイノベーションを起こしにくいというのも面白かった。
実験結果としてそのように出ており、詳しすぎることが逆に弊害になっているとまとめられていた。
知りすぎることで創造性が失われるのは皮肉な話かもしれない。
他の理由としては、感覚的なものでもとにかく分析したがるという点でユーザーイノベーションを起こせないとしていた。
デザインへのこだわりの話がどうしても製品技術のうんちくに興味を持ってしまうといった具合である。
一方で普及の段階では、イノベーターからアーリーアダプター、アーリーマジョリティと順に伝播していくと思われていた。
しかしイノベーターにアーリーアダプターとアーリーマジョリティがぶら下がっており、イノベーターがアーリーマジョリティにもうまくその魅力を伝えることによりキャズムを超えるというのが面白かった。
アーリーアダプターどまりで普及がストップしてしまうとそこから全体に広がることは難しい。
なぜならアーリーアダプターはアーリーマジョリティとの結びつきは弱いためである。
この辺のギャップをいかに埋めるかが製品普及には欠かせない。
キャズム理論はなぜこの位置で穴があるのかと思っていたが、今回の説明を聞いて少し納得した。
またデファクトスタンダードの決まり方としてポリヤモデルというものがあった。
こういったモデルをうまく使うことで文化の違いによる製品普及の違いも説明できるようになるのかもしれない。
今回の例で取り上げられていたように、ユーザーに必要な機能に立ち戻って製品開発するのは難しい。
枯れた技術が本当の価値を産み出すのかもしれない。