[概要]
村社会化している日本の組織文化から脱却し、国際的な対応が出来る企業になろうというのが一番の趣旨。
おおむね正しい内容が書いてあるが、それを成立せるために論理を崩しているように見えてしまう。
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[感想]
一通り読んで納得できるところもあったが、論理破綻しているように感じる点もあった。
日本人を鼓舞したいのかもしれないが、単に否定したいからこそそういう論理破綻になっているのかとも一瞬思ってしまった。
具体例としては、東大入試の過去と現在の難易度の比較に挙げるときに受験者数と合格定員の割合で比べるのではなく、受験学年の生徒数と定員で比べようとしていた。
大学進学率増加しているのだから、母数である生徒数が減ったところでトータルできちんと変化しているのかを追いかける必要がある。
一方で海外の大学入試との比較では、その大学の受験者数で比べようとしており、全く違うものを比べながら日本はだめであるといっている。
支離滅裂である。
会計の勉強をしたので数字には強いと自負している人がこのような論理展開をしてしまうと、単純なミスなのかそれともただ批判したいだけなのかどちらであるのか、とつい疑ってしまう。
内容としては、日本の会社組織を欧米に近づけることでより競争力の強い企業を育成しようという話である。
そのためには経営者がただ欧米流のやり方を踏襲すればいいのではなく、中間管理職以下全社員がそのような形態になれるべきである。というのが主な主張である。
特に最初の方はソニーの当時の様子を引き合いに出していた。
ソニーに関してはこの当時の動きを内部側からの視点でも読んだことがあり、立場によって意見も変わるものだなと改めて納得した。
人事慣行や意識に対して無駄があり変更すべきであるという意識は納得できるが、何をもって海外のやり方が正しいのかの証明が弱いように感じた。
日本のダメなところと海外の良いところを比較するのであれば、比べる前から勝負は見えている。
会社の目的は常に利益という前提のもとに書いてあるため、会社が存続して株主価値を高められるならリストラをいとわない欧米風の経営スタイルに傾倒しているように感じた。
会社の目的は雇用を維持することでもある。その線引きは難しいが、株主価値をいかに高めたかで評価される経営者にとっては、将来の企業戦略を考えずとも自社株買いや過度なリストラをすればよいことになってしまう。
長期持続的な企業価値の向上とは利益だけのことを言うのだろうか?
社外取締役に関しては、いろいろな意見があるが結局、お友達委員会になるのではないのかと常に思っていた。
大企業の社外取締役に他の大企業の現役取締役が抜擢されることがあるが、それを見るたびに自社に専念すべきではないのかと思ってしまう。
それと転職が多いことを正しいことのように書いていた。
いろいろな理由でそれぞれ転職するので一言で言えない部分もあるが、転職が多い状態を常に正しいと考えるのはいかがなものである。
人事も転職が多い分、苦労が増え費用が増えるからである。
個人として外部にチャンスを求めに転職をするというのには納得できるのだが、組織としてその姿勢をとることには疑問である。
個人的には日本の企業がERPをカスタマイズすることにこだわりを持っているという話は面白かった。
カスタマイズするとその分余計に費用はかかるが仕事により合った形のアプリケーションになる。
標準装備ではなく自分たちの仕事に合わせてアプリを使っている。
いい点も悪い点も考えられるが日本的にはこうなのかなぁと思った。