[概要]
1980年代のマッキンゼーでの経営戦略がまとまっている本。
今となっては古臭いかもしれないが、原点に返って物事を考えるにはちょうどいいかもしれない。
そしてどれだけの企業が、古臭い方法であれ戦略的に行えているのかということを考えるのも面白いかもしれない。
マッキンゼー 現代の経営戦略 2014年新装版 (大前研一books>Kenichi Ohmae business strategist series(NextPublishing)) 新品価格 |
[感想]
どれだけ素晴らしい理論が書いてあっても、それを実践するための能力や考えるための思考力が備わっていないと意味がない。
当時こういった自分の手の内をさらすような本を刊行できたのも、そういった部分に自信があったからこそできたのかもしれない。
もっともマッキンゼーのコンサルの宣伝の意味もあっただろう。
そして話の中に時折出てくるパーキンソンの法則が面白かった。
この本の中身も考え方の大筋がまとめてあるだけであり、実際の現場に落とし込んで考えるのはさぞ大変であると思う。
この本で話をしているのはあくまでもフレームワークであり、考え方をまとめる骨子に過ぎない。
どういうケースの場合はどういう改善方法が望ましいか、は思考力なしでは意味がない。
またシンジゲートなどという言葉を使っているが、当時からいかに競合と協力して進めていくのかに重点を置いているのは大切な考え方であると思う。
今ではシンジゲートではなく、それぞれの状況に応じてエコシステムやプラットフォームという言葉に置き換わっている。
経済成長の原因を「置換」と置き換えていた。
より高性能なものへ置き換わることへの需要である。
この話を聞いてイノベーションのジレンマを思い出した。
新しい機能や特性が付加価値になることで物事の置換が進み経済が発展していく。
それならば今既に完成形のものの置換方法を考えるのが新規ビジネスを考えるのに必要な考え方のような気がした。
また市場シェアの構成要素分解がためになった。
今まではシェア率と市場規模の重要性しか考えてこなかったが、カバー率や勝率も含めて綿密に考えると、本来とれる可能性のあるシェアが浮き彫りになり事業拡大の方向性を考えられると思う。
ドラッカーも言っていたが、自社以外のシェアについて考えることは、世の中の真の需要を考えるうえでとても重要な着眼点であると思う。
さらに組織の在り方についても考えさせられた。
組織を縦割り化してしまい、互いの顔が見えないまま仕事をすることになっている。
そのため責任の所在が不明確になっていたり、問題を把握できていなかったりしているということは今の時代でも普通にあるような気がする。
それは部門間で起こっているだろうし、本社や支店、研究所と営業との間でも起こっているだろう。
ボトムアップで情報を集める困難さも書いてあったが、組織の中での情報の取り扱い方というのは永久不滅の問題なのかもしれない。
このような問題を解消できれば組織の真価を発揮できるに違いない。
そのためのSECIモデルなのであろう。
組織での当たり前を洗い出すことは必要な行為である。
世の中がどう変わっていくか、製品に求められる機能はどう変化していくのかを考えることで「置換」すべき製品像が見えてくるのであろう。
そこに投資することが起業には求められる。