ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる
[概要]
2000年前後に発表した論文を選んでまとめてある一冊。
これまでの社会の変化から、今後の変化を予測してあり、実際にその方向に社会が変化している節もあるように思う。
全く色あせていない内容であった。
日本に関する分析が多く、すべてに詳しいわけではないが納得してしまう面も多い。
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[感想]
個人的には日本の分析が面白かった。
日本は経済よりも社会を重視する政策をとってきたがために、今のスタイル(2000年当時)になったという指摘がなんとも気になった。
戦後の地方から都市への労働人口の移動の話など、とりあえずの先延ばしにより、経済を乱すことなく社会を整えてきているように感じた。
当時は今よりも時代の変化が遅かったがために、このような先延ばしでもごまかせたのかもしれない。
現代のように変化が速くなった時代にはどのような対策をとるべきか、静観して先伸ばすべきなのかといった点に大変興味がある。
社会革新がないとこの先日本は立ち行かないのかもしれない。
明治維新で大きく時代の流れを変えられたように、そのような変化が起きることを期待している。
そもそも日本人は細かな調整か、大掛かりな変化しか対応できないような民族であると聞いたことがある。
それならば、いよいよ時代を180度転換するときなのかもしれない。
また現在トランプ大統領が低所得なWASPの立場を守るために移民に対して強硬な態度をとっている。
この行動の根っこにある心理が社会のためなのか、経済のためなのかという点も興味がある。
中国との貿易戦争などを見るに、経済のためのようにも思える。
しかし移民の増加による、南部の低所得WASPの立場を守るという社会的視点だとすると何か見方が変わってくるのだろうか。
ポスト資本主義社会になったがために、アメリカも経済よりも社会に重きをおくようになったのかもしれない。
そしてこれまでに読んだドラッカーの多くの本にも書いてあったが、知識労働者は総じて、外部にある利益や機械を獲得するために、組織の目標と自身に期待されていることを明確にしそれに必要な努力を行う必要がある。
そのためにも継続的な教育は必要不可欠であり、e-ラーニングをはじめとした教育産業の伸びが期待できる。
継続的な教育のもとに適切な人材配置と明確な目標が備わることで、組織としての生産性が大きくなると考えられる。
つまり人事の仕事がいかに難しいかを改めて感じた一冊であった。
そしてその理想の最終系として挙げられていたのが、NPOであり、日本にこの理想にかなうようなNPOはどの程度あるのかといった点が気になった。
昨年NPOの講演を聞いたことがある。
昔はボランティアの延長あるいそれにスタッフの給与が伴うことで、社会問題を解決しようといったものであったらしい。
現在ではそれに、キャリア形成の概念が入り込んできていると聞いた。
それは転職の際に外部にアピールするためなのかもしれないが、もしかしたらドラッカーの理想とする、適切な人材配置がうまくいっていないのかもしれない。
NPOの性質上、安定した莫大な給料よりもやりがいに重きを置いて働く人が多いと思う。
実際の現場では、やりがいが足りていないのかそれとも人事的な問題なのか。
もしかしたら本当に知識労働者に求められているのは、仕事の目標という短期な目線よりも、キャリア形成という長期的な視点でいかに成功を収めるかという考えなのかもしれない。