[概要]
1990年代当時の社会情勢から2020年ごろの将来の様子を推定して書かれた一冊。
ドラッカー自身は2020年ごろには変化はひと段落しているといった体で書いているが、果たしてどれほどその通りにおりになっているのかは不明である。
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[感想]
概要の通りに実際に社会情勢が変化しているのかは不明である。
個人的に面白いと思ったのは、製造業を負債と考えるかどうかという点である。
日本は製造業は負債の一種であると考えるために海外に持っていこうとしているとしていた。
これは製造業などの人員を減らして、より付加価値の高いデスクワークにまわすというものである。
途上国に低い労働コストで生産すればよいというである。
現実問題、この時代には工場の海外移転が進んで産業の空洞化が進んだとされている。
今もその兆候は変わらないだろう。
その中で多くの人員はサービス業についたのだが、本当に生産性を高くできているのかに興味を持った。
果たして本当に日本は高い生産性を持っているのだろうか。
現在の日本の生産性の低さは他の先進国と比べてかなり低い。
日本労働生産性本部がOECDの資料からまとめたものを調べてみると戦後から先進国の中ではかなり低い水準である。
これは全産業推計であり、製造業の割合を低くしてしまえばさらに向上するのかもしれない。
しかし現在でも変わらずの順位であるという点から、産業の移動の影響はあまりないように思える。
もしくはデスクワークの生産性がものすごく低く、工業を海外に追い出してやっとその水準というのも考えられる。
どちらにせよ、サービス業の生産性は満足のいくものとはなっていなさそうである。
サービス業では成果の測定が難しい面もあるが、ここを改良できれば日本の再成長もあるかもしれない。
一方アメリカでは今も工業は重要な産業である。
WASPの工業労働者の立場を確保するためにも、トランプ大統領はメキシコとの国境に壁を作ろうとした。
アメリカの様子はドラッカ―の指摘とあまり変わってなさそうである。
他にも年金に関する考えが面白かった。
日本テレビの買収問題は日本のコーポレートガバナンスの欠如により起こった節がある。
ドラッカーは年金のために事業監査をすべきであると説いているが、その問題が20年近くたった後に日本で問題になったのだ。
まさに予言である。
そしてそれと同時に、GPIFが運用する日本の株式はどのようになっているのかが気になった。
日本は年金のために株式をどのような基準で選定しているのであろうか。
ここをうまく行わなければ機関投資家に狙われるだけになると思われる。
まだまだ読むほどに味の出る内容であると思う。
ドラッカーの指す2020年になり、答え合わせがどこまでできるのかはわからないが、一つの指針として物事を考えるきっかけになったように思う。