未来への決断―大転換期のサバイバル・マニュアル
[概要]
1995年までの世相から、社会の変化を予期するためにこれまでの社会の変化を緻密に分析した一冊。
特に社会保障の在りかたについての記載は面白かった。
政治に期待している人がどれだけいるのかはわからないが、期待が裏切られくすぶる思いを言語化してくれているような気がした。
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[感想]
ドラッカーは別の書籍で技術をモニタリングすることで社会の構造変化を予測し、新たな価値を産み出すべきであると言っていた。
今回の本では同様に技術だけでなく、社会体制なども含めてより広く見ている。
予言を行うための本ではなく、これまでの変化を解釈しそれを踏まえての理論を説いている。
社会保障の在り方や男女の機会均等など、現代でも解決し切れていない問題について焦点を当てた話が多い。
例えば、大きな政府として大量の税収を集め期待以下の効果ばかりの政策により、民衆の支持をうまく得ていない政治の現状がある。
これは民主主義により選ばれた議会にも拘らずこのようになっている。
現在でも日本は、度重なる増税に日本国債の発行を行うことで政治を進めている。
これは本当に正しいのであろうか。
ドラッカーは解決はお金を基準とした富の再分配が答えではないとしていた。
生活保護給付金などもそれ自体は生存を助けるものであるが、それに依存することは必ずしも良いことではない。
働くことが出来るのに不正に給付をもくろむようなモラルハザードの話ではなく、ドラッカーは何もせずとも生活できるという依存が人生を浪費させると言っていた。
本来あるべきである社会保障や福祉は、平等のための金銭的な権利を得ることではなく、能力や誇りを取り戻し市民社会に復帰するための足掛かりでなければならない。
現在の政治の方針は、あくまでも富の再分配や金銭的な平等に注視しており、誇りを取り戻すためのものではないような気がしてならない。
それを行うために第3のセクターとして、NPOなどを挙げていたが、日本ではそのようなものがあまり台頭していない。
未だに市民社会は政府によってもたらされるものであるという認識が強すぎるのだと思う。
こういった現状から抜け出し、政府の役割を再考すべき時期なのかもしれない。
現在では仕事を求めて国内のみならず、国際的に移動する人々が多いと思う。
そういった中で自分のルーツ、コミュニティを確保しながらどう生きるのかを考えるには、市民社会に移行する必要があると思う。
日本は島国なので、ルーツまで考える必要がなくとも、限りある財源をいかに有効に使うかを考えるならば、政府の在り方や民主主義の在り方を考える必要は十分にあると思う。
このままでは社会保障はパンクしてしまう。
また、社会体制の在り方も踏まえて、製品などにより利益を生み出すのがイノベーターである。
今後も社会はどんどん姿を変えていくことであると思う。
そのなかですでに起こっていることを整理し、そこから未来を創り出すものを考えることで機会が生まれる。
データや統計情報は起こっている事象を伝えてくれる。
よりよい未来のために必要な決断をしていくことが望まれる。