技術経営の考え方~MOTと開発ベンチャーの現場から~
[概要]
技術経営の本というよりか、著者の新規事業設立の際の問題点などを事例としてつづった本。
事例としては面白い。
技術経営で一度は目にする、技術の発達過程と障壁(死の谷など)の定番の図は問題ないが、著者の作った図があまりにも分かりにくい。
[感想]
技術経営の本と思って読んだが、技術経営の要素はほとんどなかった。
技術を製品化できないと意味ないよねというのと、外部技術をどう取り入れるか、という視点でばかりを書いており、知財の扱いや製品を上市した後の戦略などは全く触れられていなかった。
そのため技術者がどう製品化するのかという点では価値があるが、技術経営という視点からでは実りの少ない本であった。
著者の所属が産業機械製造中心であったためかもしれないが、上市までの技術の問題以外にも触れない限り、技術経営とタイトルにつけるのは良くない。
さらに著者の作成した図があまりにも分かりにくいものであった。
図中の〇が技術を表しているのか、製品を表しているのか不明であったり、そもそも〇を技術(製品)とアクター(企業や大学など)両方に説明もなく用いているため、判断が付きにくい。
そのため図としての効果を発揮し切れていない。
しかし事例としては面白いものであった。
説得性を感じない部分もあったが、30年近く前の日本の産業界の内部の様子も把握できたのは面白かった。
大企業内の人間模様やプロジェクトマネジメントの苦悩を実体験として読めたのはいい経験になった。