[概要]
古くは技術は存在せず、技能のみであった。
これは職人の技のように秘伝的に方法が散らばって存在しているだけであった。
しかし技能を体系的にまとめたことで技術として一般に普及させることが可能になった。
生産の中心は技能を持っていた人だけではなくなり、社会構造はそれに伴って変化した。
過去の同シリーズを技術的な視点も踏まえて再構築したような内容であった。
テクノロジストの条件 (はじめて読むドラッカー (技術編)) 新品価格 |
[感想]
いつの時代も企業は成長するために、社会は問題を解決するために新たな手段を求めている。
そういったものを一から生み出していくのは至難の業である。
ただ変化していく方向を観察することにより見極めていくことは、不可能ではない。
この本ではそのことについて説いている。
実際にIoTなどの技術でも、やっていることはまだデータを集めて手動で最適な運用方法を探して当てはめるくらいである。
データをもとにより良い方向には導けていても、一から何かを生む出せるほどの賢さにはまだ到達していない。
このままこの技術を追っかけていけば新たな方法論によって大きな成果があるのかもしれない。
もしくはこの本の中である、蒸気機関車の例のように新たな活用方法が見つかるのかもしれない。
またこの本を読んでいて思ったこととして、SECIモデルの話である。
SECIモデルでは暗黙知と形式知を社内でどう循環させていくのかを書いていた。
今回読んでいて全体的に感じたことは、活版印刷の発展により暗黙知として保存されていたものがすべて形式知として出回るようになったことである。
これによって職業を超えた知識でも身に着けられるようになっている。
現在では新たな技術や特許は広まると瞬く間に方向性が見つかり形式知へと変貌していっているような気がする。
となると、今求められていることは、いかに暗黙知を深く探り、何を形式知にすべきか暗黙知をどう形作ってイノベーションにつなげるかという点であると思う。
無意識のうちに当たり前になっていることを深堀すれば、そこに埋め込まれていた暗黙知が形式知へと昇華して新たな技術になるかもしれない。
それがAIやIoTかもしれないし他のことかもしれない。
どちらにしても、やるべきこととして単に技術動向を追っかけるだけではなく、そこに知識構造の転換があるのかに注視しべきであると思う。