[新版]ドラッカーの実践経営哲学 ビジネスの基本がすべてわかる!
[概要]
ドラッカーの著書からいくつかテーマごとに抜粋して解説した本。
比較的読みやすく、ドラッカーを読み始める前に知っておくのにちょうど良いように思う。
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[感想]
最近読む本の多くで、日本とアメリカの経営の違いを収入差から考えている話を見かける気がする。
アメリカは経営者の報酬が高すぎることが問題かもしれないが、日本の問題としては生産性が低いことにあると思う。
アメリカ的な経営に移行したソニーは日本で最初に取締役機能の分離したとあるが、その内情が事実であるのなら、実際は分離はあまり機能していなかったのかもしれない。
本書の中でも規制で保護されてきた産業の話や金融ビッグバンの話があったが、旧態依然の方法で収入を得られていた過去とは違い、ポスト資本主義社会の現在では明確に生産性を求められている。
市場にモノがあふれ、さらに経済も活気づいておらず消費意欲を高めにくい中、生産性を高めることで人件費の割合を相対的に下げていくしかない。
いかに生産性を上げていくのかという点は、今後人口減少が確実になる中で重要な問題である。
またこの本の中では、「ポスト資本主義社会」のことを「組織社会」と称していた。
市場にモノがあふれて新たな価値を生み続けられなければ利益を得られない社会と、目標をもって組織で行動する社会とは意味が違うように思う。
もっとも、組織社会であるとしても、その機能性を活かすための組織論というのには様々な立場や方法があると思う。
技術の発達により、製品の品質で差別化することが難しくなった今、有効に機能する組織が必要である。
縦割りにしても会社全体が見えてこないため内向きな組織になってしまう。
企業内の士気を高めるためにもSECIモデルを回すためにも、大企業の組織論は重要な問題である。
ポスト資本主義社会でも生き残るためにはマーケティングとイノベーションを両立させる必要がある。
お客に買ってもらうための仕組みづくり、マーケティングの本質として書いてあった。
お客が金と時間を何に使っているのか、どういう理由で買っているのか、B2Bならさらに会計上の問題で買いやすい必要がある。
マーケティングは技術革新よりもさらに奥の深い領域なのかもしれない。
個人的にはケインズとシュンペーターの経済論の比較は面白かった。
シュンペーターの指摘した通り、政治家と官僚の権限が膨れ上がっている。
社会保障に回す金額がどんどん増えており、それに併せて税金も高くなっている。
税金を払っているのだから保障をさらに充実させるべきであるという、「お客様は神様」論が民衆から国に向けられている。
このまま大きな政府になり続ければどこかで無理が出るのではと思ってしまう。
政府の役割が多すぎる。
その時にケインズの経済論の、政府の景気コントロール能力が否定されるのかもしれない。
現状も、官僚が出世のためにいかに財務省からお金を引っ張れるかに奮闘しているのではと思う。
電気自動車も購入補助金よりも、まずは各国に先駆けて開発するための研究費に充てればよいと思う。
しかし予算配分の問題や官僚の成績のために、正しくないように見える順序で補助金が回っていると感じる。
補助金は競争の原理をゆがめるように思う。
過度な補助金は廃止すべきかもしれない。
アベノミクスで数字の上では景気は良くなったのかもしれない。
実際は分からないが、ケインズ理論による政府の巨大化は見直す必要があるかもしれない。
またコンピューターが生産性を高めたという関係はないという意見は興味深かった。
例としてあったPOSシステムの話では、最適な在庫にしたにもかかわらずうまくいってなかった。
真夏から秋にかけての冷麺の売り上げなどなら、この説も安易に納得が出来るが実際はどうなのであろうか。
データを読み解くというのは、心理までも読み解かないといけないのかもしれない。