[概要]
既存の事業とは別に新規に事業を行う難しさをイノベーションのジレンマと呼ぶことがあるが、日本の場合はどのようになっているのかを分析した本。
日本版の事例はまとめてあるが、個人的に既存の事業をそのまま育成することとの違いはわからなかった。
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[感想]
選ばれた事例の製品は既存の製品とは形式や用途が違うものが多くあった。
そのため確かに組織は、新規事業の難しさを、つまりイノベーションのジレンマを抱えていたと思う。
しかし研究開発の困難さ以外の点で普通の事業展開との違いが判断できなかった。
例えば機会形成するためのプロセスとして一連の事例の様子をまとめていたが、既存事業からの新製品開発に関しても同様のプロセスは成り立つように思う。
あるいは3つの機会形成パターンに関してR&D技術者が主導した範囲として割合が挙げられていたが、これも当たり前のような話に見えてしまった。
機会形成の非連続の3つのタイプがあるが、それぞれのタイプごとに不確実性の軸が追加されているように思う。
その不確実性に対処するためには別の専門家の力を借りなければならないのは当然であるように思う。
既存の事業でも自身の専門の範囲外なら他人の力を借りざるを得ない。
これらの点からは、イノベーションのジレンマのために特別なことをしているといったイメージを受けなかった。
現状の日本と照らして問題があるとすれば、当時のような長期にわたる研究はもう難しいということだろう。
研究の分野も研究開発費も増加している。
NIHの精神で自社の中央研究所も廃止されており、転職などで人材の移動が速くなっている。
今回の内容がそのまま正確な様子を捉えていたとしても、もはや使い物にならない時代になっているのかもしれない。
そういったなかでイノベーションを起こすにはどうしたらよいのだろうか。
またこれらの既存・新規両方の事業をこなすことを両利きの経営などと呼ぶ場合がある。
ジレンマを打ち破るためにも、両利きになる方法をさらに学ばなければならないのかもしれない。