[概要]
技術経営自体の否定ではなく、安易に答えを出す秘策として技術経営にすがることを否定している。
内容としては、経営者側はどうあるべきか技術者はどうあるべきかといったことや、目の前の技術だけでなく産業から考え新たな事業戦略の手を打っていくべきであるとしている。
なぜ技術経営はうまくいかないのか?次世代の成長を生み出すマネジメント 新品価格 |
[感想]
技術経営ではなく、経営と技術はどう付き合っていくべきかを捉えようとした本であると感じた。
安易に解決策を与えてくれるものが技術経営ではない。
MBAやMOTについてのそういった神話を打ち破る内容である。
それを表すような点として、短期的な利益のために技術から製品を生み出すのではなく、長期的な視点に立って技術から事業や産業を生み出すようにすべきであるとしている。
一つの技術をきっかけに、産業の川上川下に影響を与えるようにする。つまりエコシステムを創り出せるような中長期的な視点が必要なのである。
そのためにはコアコンピタンスにとらわれると大局的な点から経営を行えないことを指摘している。
特許を中心にコアコンピタンスを固め、事業展開する場合が見られるがそこを捨てに行くという考えはあまり見ない気がする。
少なくともドラッカーは事業を自ずから破棄していくことを提案していたが、日本人の本ではあまり見かけない記載であったように思う。
これらはどちらかといえば経営者側の立場での話であるが、そういった流れを先読みし、反対が出る中でも投資を行うことが必要である。
事業部はどうしても目先の技術に思考がよってしまうような気がする。
イノベーションのジレンマにあったように、目先の機能拡大を狙っていれば他の製品に足元を掬われかねない。
株主や銀行をうまく説得するのは至難の業かもしれないが、経営者の務めはこういった部分似るように思う。
この本ではMOTの基礎は「価値設計」と「売れて当たり前のロジック」を突き詰めることであるとしていた。
それぞれの言葉は技術と経営に対応しているように思う。
技術から価値設計を考えるといったことは割と常識的な内容であると思うが、売るロジックを考えるという点は技術に囚われて市場を軽視している人にはなかなか難しい視点であるように思う。
これらを併せ持つ人材育成こそが、技術経営なのである。