技術経営卒の書庫

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イノベーションと企業家精神

[概要]

ドラッカーの書いた数ある名著の一つ。

イノベーションの七つの機会や企業家に必要となるマネジメント、戦略、心構えについて記載してある。

基本的に事例をもとに著者の考えが書いてあり、30年以上前のものとは思えないほどの新鮮さを感じた。

就職する前に出会えてよかった一冊であると思う。

 

イノベーションと企業家精神 (ドラッカー名著集)

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[感想]

この本は大きく3つに分かれている。

イノベーションを起こす7つの機会、マネジメント、戦略 の3つである。

ひとつづつ見ていきたい。

まずは7つの機会である。これらの機会は基本的に成功確率の高いものから並べられていた。

これは私が大学院の授業で最初に取り扱った内容である。この時受けた新鮮な感動によりマネジメントの持つ面白さを感じた。

この本と同時に学んだのが、本の内容を解釈するだけでは駄目であるということである。自分の中の経験やそこから生み出されるモデルと比較し考えることが重要となってくる。

それぞれの機会は、

1.顕在化しており、リスクも投資もなく解決できる。

2.顕在化しており、組織内や産業内に存在する。ただそれは組織内の人間には見逃しやすいというデメリットが存在する。

3.ニーズはあるもののそれ自身は解決策ではない。顕在化されていない。そのためには知恵を絞る必要がある。いかにして製品などにそのニーズ解決を落とし込めるかが重要になってくる。

4.産業自体が変化しているため参入しやすくなっている。そして変化の中に存在する機会をつかめきれば成功する。しかし到達すべき点や求められる結果が分からないと、何も対策を打てない。

5.産業構造よりも分かりやすく統計的に変化しているため、予測や需要の変化を見つけやすい。人口の変化と需要の変化を結びつけられれば成功する。きわめて定量的な変化。人通りの多い駅前通りで店を開けば繁盛するというほど簡単なものではない。

6. 認識はいつどのように変わっていくのかをとらえるのは難しい。定性的な変化であり、実態をつかむのは難しい。定性的であるために、求められている機能やその評価軸はあいまいである。そのため行動と結果の評価が難しく戦略に落とし込みにくい。

7.技術的な大発見などに基づく変化である。そのため製品などに形を変えるにはリードタイムを要する場合もある。そして新たな技術であり、これまでにない効用を与えてくれる機能をもつため、正しい利用方法に結びつけにくい場合もある。現在でも死の谷といって持ち上げられるほど、いまだに攻略の難しい機会である。そもそもその技術から市場はつかめるのかという部分も問題である。

といった感じにまとめられる。

 

イデアによるイノベーションは、上記のような機会のように理論的な説明が難しくなっているためイレギュラー扱いを本書ではされていた。

そしてこれらの機会はいまではネットの普及によりすべて価値の薄く解決されやすい状況になっている。

昔は気が付けばすぐにこれらの機会をものにすることは出来た。しかし現在のように情報の価値が薄れていく中では、これらの機会は比較的すぐに見つけられ、解消されるものとなっている。

学ぶべきはアイデア勝負ではなく、どんな技術もこれらのように求められている機会を把握しながら形づけていくことが重要である。

また1から6の機会は情報由来なのに対し、他の機会は技術由来のイノベーションである。

どちらの立場からモノを考えるのかによって、必要となってくる周辺知識も変わってくる。技術由来のイノベーションであれば、知財戦略などにも目を向けていく必要がある。

 

マネジメントに関しては、どういった企業家の立場であれ必要となってくることが説かれている。

イノベーションを起こすには事前準備も必要であるが、その後いかにしてその地位を保つのかも同様に重要である。新たな価値を生み出し続けない限りは事業の継続は出来ない。

そのために組織はどうあるべきか、何に気を付けるべきかが記載してある。

どういった企業であれ、新規価値を生み出し続けることは重要である。その流れを生み出すことは難しい。

成功体験や企業の組織論が邪魔をして、軍隊的・官僚的な集団になると持続的な成功は難しくなる。

戦略に関しては、いかにしてイノベーションの成功確率を上げるかが書いてある。

そもそもの売り出し方自体がイノベーションにつながる場合もある。

そのくらい戦略は重要なものである。

イノベーションを生み出すこととその戦略は切手も切り離せない関係である。

 

いずれの内容も文章を読むだけではなく、自身の経験や考えからモデルを構築し、それにぶつけて揉んでいく必要がある。そのようにして解釈しなければ、字面を追うばかりで何も理解が出来ない。

知識があっても知恵がなければ意味がない。語彙を増やすだけではもったいない。

理論を学ぶのではなく、成功確立を高めることが必要である。

そのための事前性を得るために学ぶに過ぎない。

そのことを教えてくれた本であり、そのことを教えてくれた大学院の環境と教員には大変感謝している。