いまこそ出番 日本型技術経営―現場の知恵は企業の宝
[概要]
事例としては面白いが、理屈としてどうなんだろう と思うような理論が出ていたりする。
その多くは現場での顧客との出来事、作業員の意見は大事であり、ここにカイゼンの可能性が秘められている。 といった内容になっている。
新品価格 |
[感想]
本の上梓が震災直後という事もあり、震災についてや日本の底力を生かす経営 みたいな文言が多くみられる。
そしてその源泉の多くは現場であると書かれていた。
確かに問題解決を行うのは常に現場である。
そういった意味では正しいだろう。
本の中ではプロジェクト実行時にでる客からの大小な要望変更を宝の山としていた。
実際に現場のみからすると、安易に請け負ってしまうと、失敗時に信頼を下げることやPM費用の大幅増加などがありえる。
細かな部分までどこまで対応できるのか、余裕のあるPJなど基本的に存在しないので、高い理想に見えた。
言い分はわかるが現実は難しい。
もっともそれに対応したアジャイルという手法はあるものの、万能メカではない。
QCDをきっちり抑える仕組みが社内にあってこその、こういった発展意見に思う。
スペックダウンの開発術という考え方が面白かった。
確かに昨今の電子機器は余計な機能ばかりついている。そのせいでボタンが多くなったりと、余計に分かりにくい。
ただ重要な機能に絞り開発していくことは長所にも短所にもなるように思う。
イノベーションのジレンマであったように、ある点まで欲しい機能が飽和してしまうと、今度は違う価値判断軸が重要になってくる。
その場合、スペックダウンとして持っていたこだわりが逆に使えなくなるかもしれない。
このあたりのさじ加減は難しいように思う。
ただ開発速度を上げるために、既存の製品に新しい機能を足すというテンプレ型の生産がよくない という指摘。
これは個人的に納得感が強かった。
抽象化するには引くことが大事なように思う。
この本の序盤では電力消費量基準での生産性を考慮した指標を使っていた。
現在の日本でも電力供給源が不足している。
電力を安価に供給できない限り、海外生産を行っている工場が日本に帰ってくることはないだろう。
海外に工場がある間は国内投資も減少すれば、コロナのような緊急事態時に貿易が止まるなどし、生産力が落ちる恐れがある。
火力発電機の増築はアセスメントや建造に時間がかかる。
当面の問題を解決するには原発しかない。
原発再稼働でないにしても、電力問題、エネルギー問題を争点にするような高度な参院選になってほしかった。
最後にディズニーランドで最近売っている、揉むと空気が流れて耳が動くタイプの帽子、この設計意図が気になった。
震災当時は防災頭巾としてぬいぐるみなどを配っていたと書かれていた。
ディズニーには詳しくないが、もしもこの帽子的なアイテムが防災頭巾としての備えも考えて作られているのなら、ディズニーの現場力・開発力は素晴らしく見える。