[概要]
アメリカ的な経営と比較し、日本的な経営を分析している。
日本的な経営の良さとして、共同体的な経営を挙げている。
具体的には、アメリカの経営層は多額の報酬を得るために解雇を積極的に行うが、日本ではそういったものは少なく 、報酬格差もさほど大きくないことなどを挙げている。
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[感想]
この本の中では日本経済停滞期はあくまでも10年としていた。
当時の基準ならまだ10年しかたっていないので、そうなるのであろう。
現状は30年に突入するとさえ言われている。
その中で取り上げられているのは財務分野であった。
債務負担を減らしキャッシュを重要視している。
内部留保を貯めこみ過ぎであるとも言われているが、そのおかげかコロナショックでも今のところ多くの企業が生存しているように思う。
一方アメリカの経営はCEOが巨額の収入を得ており、従業員を経営層が搾取しているともいえる。
JPモルガンも、経営層の給料は最大でも20倍程度であるべきと言っていた。
アメリカは解雇規制が日本よりも緩いのもあってか、赤字になると一度に大量に解雇する。
それによって直近の経営を整えるが、再スタートするにも育てた従業員がおらず機会を逃すことがある。
その事例としてボーイングが挙げられていた。
CEOはストックオプション制度のために直近の成績を最適化することを重視している。
そのため、いかにいびつな方法であっても、解雇などによりその場しのぎでも黒字にする必要がある。
コロナショックまでアメリカ株価はうなぎのぼりに高成長していた。
株価の上昇は株主への還元の一つである。
また銀行借入を行う際のアピールポイントになる。
だが本当に理由はCEOが自社株買いを行うことで、自分のストックオプションの価値を高めるためである。
ボーナスや配当などにより本来従業員や株主に還元されるべき利益は、株価を経由して結局CEOの懐に入るのである。
いびつに株価が高まることでアメリカ株はバブルを起こしていた。
経営者の報酬はどうあるべきなのかというのは難しいとは思う。
しかしアメリカ的経営は必ずしも良いというものではない。
不正会計を引き起こすきっかけにもなりうる。
他にも日本の企業の問題として、数が多すぎる点を挙げている。
現在はコロナショックや跡継ぎ問題などで倒産や撤退が見られている。
疫病や災害などのいびつな理由を除けば、規模の経済性やゾンビ企業の退出を狙うためにも企業数は減らす必要があるように思う。
日本の成長率が頭打ちしているからこそ、経済の再設計を行い、自然の摂理にまかせて統廃合を進めていくべきであると思う。
この本の中では、2004年の時点でその作業はほとんど終わっているとしていたが実際はどうなのであろうか。
また移民問題にも触れている。
日本のやり方では移民を受け入れるリスクが高いとしている。
経営としては、従業員の人件費削減のために技能実習生といった形などで移民を受け入れた方が安くつくのかもしれない。
しかし大量の移民は治安維持や文化的問題から影響があるように思える。
なによりデフレマインドが国民にさらに根付いてしまう。
現にトルコ移民を大量に受け入れているドイツではナショナリズムが過度に高まる恐れがある。
アメリカの失業者も移民が多く、税金を誰のために使うのがよいのかという点から考えると、大量の移民、数としての移民労働者の促進はデメリットが多いのかもしれない。
最後に他に面白かった点として、規制をうまく利用して大きな成果を上げた企業の例がある。
これらのストーリーは、閉鎖的な環境であると思いこみ非難するのではなくその規制をうまく利用している。
こういった機会を活かせる企業が生き残るのである。