[概要]
農業・工業・サービス業からさらに分岐し、経験を売る産業や変革を提供する産業について考察している。
顧客と共にした時間に対して請求するのが経験産業であり、顧客が実際に達成した成果に対して請求するのが変革産業である。
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[感想]
サービス業も、我々の身近になるにつれてコモディティ化しているのかもしれない。
単に機能を果たせばサービスは満たされているといった発想になることで、どんなサービスもありきたりになっていると思う。
一番面白いと思った文章は、自動車の歴史的展示物のショーケースでの経験に料金を請求するという提案に対して、
「そんなことをすれば顧客はここで何かしたいのかについて要求する権利があると思うでしょう」
という発言である。
これが経験産業のすべてを一言で表しているように思う。
機材価値に対して明確に料金を請求することで、本当の経済価値を売っていると言えるのである。
何気ないような経験でさえ、このように料金を請求することで経験経済に昇華させることが出来るとしている。
もっとも費用に見合う対価・経験を提供する必要があるのだが。
またこれを行うメリットは、費用がどの項目に対応しているのかを判別することにもなる。
商品の価格には、場所代が含まれているのか、サービス提供料が含まれているのかどうかという事がはっきりすることで、買い手が評価を行いやすくなる。
このように無料であったものが有料になり、価値の源泉がはっきりすることが経験産業であるらしい。
この本の中にあった、ペプシとコークの例えはイノベーションに重要な考え方であると思った。
飛行機の中でペプシを飲みたいと思っていても、客室乗務員がコークしかないというために、諦めてコークを注文するようになる。
本来の需要を捻じ曲げて仕方なく従っているだけなのに、航空会社は顧客満足が高いと勘違いしていることになる。
デザインシンキングなどをする上で必要な、本当の需要を探すという行為に似ている気がする。
表面的な需要にしか答えずに顧客満足を追い求めるというのはなかなか骨の折れる作業であると思うが、それこそがイノベーションを生み出すために必要になるのかもしれない。
知識産業の時代になるにつれ、B2Cの分野でも経験や成果に対して報酬を払うことが一般化するのかもしれない。