戦略の本質: 戦史に学ぶ逆転のリーダーシップ
[概要]
ここ数十年内に行われた6つの戦争、戦いから戦略の本質とは何かを学び取ろうとした本。
それら6つの戦争は皆、途中で逆転しているものであり、そこから戦略の本質とは何かをくみ取ろうとしている。
分析としてはもう少し欲しかった。
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[感想]
逆転を果たした戦争やその時のリーダ―達の挙動から、何が戦略には必要であるのかを分析している。
方法論が優れていただけではなく、それを実行し切れるだけの現場力やリーダーシップ、政治力など様々なものが絡み合って成功していることが読み取れる。
この本の最後では、そのやり方が理屈的に通るのかだけではなく、言葉の持つ力や信頼感までもが重要であると説いている。
実際に成功した事例でも毛沢東やチャーチルの談話など言葉による力で信頼感を勝ち取り勝利に導いているものなどがあった。
もう一段階抽象度を挙げて分析することが出来れば、より価値の高い一冊になったのではないかと思う。
個人的には毛沢東の事例が面白い。やはり本人が戦争の研究を丹念に行っていただけあるように思う。
キャッチーなフレーズで兵士たちにどう戦場で立ち回るべきかを説いたり、あらゆる手段を通じて情報の獲得をしていたりと、言葉の持つ力を大事にしていた。
ましてや情報操作にもたけているあたり、毛沢東は油断のできない人物であっただろうし、それが現在の中国にも受け継がれているのであれば、政治力に長けている国であるように思う。
本人も修辞的に表現することに長けていたのは素晴らしい。この点もチャーチルと似ている。
イギリスの兵器製造方針が、第一案ではなく現実を直視した第三の案を採用していたという点も面白かった。
技術的理由などを克服できないことを前提にはじめから第三の案をとることで、量産化などのトレードオフに悩む時間を短縮しているのはさすがである。
最初の事例以外のところで書いてあったが、攻めることが出来ると兵站が長くなりそれが結果として不利を招くという話は面白かった。
実際にそれでうまくいっていない戦争の事例もあれば、急激な企業の業績拡大のように、攻める事ばかりを考えた挙句あらゆる面でおろそかになるという事がある。
攻めるという事が実際にいかに難しいのか考えさせられる点である。