技術経営卒の書庫

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挑戦の時―P.F.ドラッカー・中内功 往復書簡〈1〉

[概要]

ダイエーを築き上げた中内氏とドラッカーのファックスのやり取りをもとに、書籍化したもの。

ほとんどの内容は中内氏が質問し、それにドラッカーが的確にこたえるといった流れで進んでいる。

産業の空洞化の話や日本の教育は画一化しており悪であるといった内容は必見であった。

 

挑戦の時?P.F.ドラッカー・中内功 往復書簡〈1〉 (往復書簡 (1))

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[感想]

生産活動はコスト最小化の中で行われなければならないという説と産業化を防ぐためには高給でも日本国内で生産を行うべきであるという説は改めて見ると面白い矛盾であるように思う。

理想としては技術の普及によりコモディティ化した製品は海外の安価な労働力に任せ、国内では知識産業により付加価値の高い生産を行うべきであるだろう。

しかし実際に知識労働者への移行は教育が必要であり、理想には程遠い。

書籍の発売から25年たっているが、実際に転換は進んでいるのだろうか。

 

また疑問であったのが、産業が空洞化しても円高ドル安になれば資源輸入国である日本は経済全体でみると利益を受けるとなっていた。

現在日本は円安により、工業製品の輸出やインバウンド客の呼び込みを行っている。

いわばドラッカーの指摘とは真逆である。

外貨獲得を国内に根付かせるためにはインバウンド事業を普及させる必要があるので、円安にするのは正しいように思う。

しかし輸出に関しては、今回の指摘から考えると、未だに日本は知識産業への移行が完全に済んでいないという事になるのではないだろうか。

長い目で見て知識労働者への移行が完了するような通貨政策や産業政策が望まれる。

 

さらに、日本画と日本の教育についての話は面白かった。

日本の教育が必ずしも間違っていない根拠として、日本画などの芸術を挙げていた。

これまで日本芸術では流派が少なく、同じ師から学んでもある時を境に個性に満ち溢れた作品を多く輩出している。

実際にこのような個性は企業内でもあふれている。

 

最近巷では画一的な教育は良くない個性を伸ばすべきであるという話を聞く。

ドラッカーは画一的な教育が悪いわけではなく、学歴によりキャリアが決まる点を指摘している。

受験のための環境を金で買えれば、キャリアが開ける点を指摘している。

個性を伸ばし興味を持たせる時間を受験のために使うのはもったいない。

 

最後に三十代までにイノベーションを起こせなければ、もうおそらくはイノベーションを起こしがたいという文章を見て恐れ入った。

三十代まで自分に残された時間はまだあるが、何らかの行動を起こすなら時間は限られていると感じた。