ものづくり経営学―製造業を超える生産思想
[概要]
製品のアーキテクチャに着目して様々な業界について分析した本。
製造業だけではなく、サービス業も構造的に分析している。
内容は充実しているように思う。
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[感想]
この本の中では製品のアーキテクチャを捉えることにより分析している。
その分析も自社製品だけではなく、他社製品との共存という意味でも分析しており、エコシステム的な観点も考えることが出来ると思う。
携帯電話のガラパゴス化について興味を持った。
この本の中では、アーキテクチャを構成するときに日本では通信事業者の関係の中で構築されていると書いてあった。
確かにi-modeなど、通信事業者主導のプラットフォームのために日本の携帯はガラパゴス化してしまった。
もし通信会社主導になっていたのであれば、ガラパゴス化は製造業には避けられないものであっただろう。
製造業側からの歩み寄りなら、みずから泥沼にはまっていることになる。
このことを考えると、アーキテクチャやプラットフォームを考えるときはその後の流れを考えないと、うまく軌道に乗らないと思う。
この本をお勧めできる点として、サービス業も製造業と同様に分析している点にある。
トヨタ生産方式を当てはめて無駄を削除しているだけかもしれないが、サービス業は顧客にサービスを与えるのが仕事であり、欠品管理などによる時間・売上のロスは本業の成果を損ねる。
感覚重視ではなく、本業に成果を上げるためにこそ、このような手法を活かしていくべきであると思う。
この本の中では、製品とは設計情報が素材に転写され形作られたものであるとしている。
設計情報は顧客が求める効用を考えそれを満たせるように情報を体系化したものである。
また「セールスとは製品の翻訳作業である。開発技術者が作ったものを翻訳して、エンドユーザーまでそれを正確に伝える必要がある」といった感じのことをソニーの盛田氏がこの本の中で言っている。
ここでいう翻訳作業も、技術者が見出した効用を顧客まで正確に届けようというものである。
さらにデザインシンキングという考え方がある。
デザインというのは、モノの姿かたちや色のことではなく、その製品やサービスの持つ機能をより有効に示すために形作ることである。
どの内容も似ており、技術であれ設計図であれ顧客の求める機能・効用をいかに形作るかが求められている。
これはモノづくりの基本的な考え方のように思う。
それを無視した高機能性な製品ばかり増えてきているような気がする。
求められるラインを越えてしまったら、それ以降は創造的破壊などをしていかない限り先細りしてしまい、新たな成果を求める事が難しくなるように思う。
日本の家電製品はどうなのだろうか。
個人的には8Kには関心はないので、安価なテレビで十分であると感じてしまう。
最後になるが人は金銭欲で動くわけではないという実験についての記述が面白かった。
製造業とは関係がないものの興味のある実験内容だった。
今後このような流れでソフトウェアやインターネット関係について書いてある本をもう少し見てみたいと思った。
そうすることで、その本質の正しさがより議論できると考える。